処遇改善加算の不適切事例等
本ページに記載の情報について
処遇改善加算の取り扱いについては、各役所により見解が異なっております。
また、担当する職員によっても言うことが違うということが実際に起こっております。
本ページに記載の内容は、あくまで当事務所が役所や事業所とやり取りしたものや各自治体が出している不適切事例等に基づき記載したものです。
全ての事業所にあてはまるものではありませんので、あくまで参考事例としていただき、具体的には管轄の役所にてご確認をお願いいたします。
なお、役所で確認したときは、日付や担当した職員名などを記録しておきましょう。
実地調査には、その職員が担当するとは限りませんので、きちんと確認したということがわかるように記録を残しておくとよいでしょう。
対象者以外への分配
介護職員以外
支給対象になるのは、「介護職員」です。
支給しても実績報告として計上出来ないのは、医療職(看護師・PT・OT・STなど)や介護職と兼務が出来ない他の職種(サビ管など)です。
なお、看護師や准看護師であっても、訪問介護員など介護職員として従事する場合は、もちろん支給対象として問題ありません。
サビ管や児発管に支給しているケースが見られますので、注意が必要です。
※特定処遇改善加算やベースアップ支援加算は、介護職員以外への賃金改善も可能です。
サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者
サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者は常勤専従とされているため、介護職員との兼務が出来ないと解されることから、処遇改善加算の対象外になります。
ただし、グループホーム(障害福祉サービス)のサビ管は常勤要件がないため兼務可能な場合があります。
また、必要人員以上のサビ管も他の職種と兼務可能な場合があるため、介護職員として従事した時間は処遇改善加算の対象になり得ます。
役員(代表取締役や理事長、取締役など)
役員への分配については、かなり地域差があります。
例え代表取締役であっても介護職員として従事しているのであれば、処遇改善加算の対象としてもよいという役所もあります。
また、その際も、役員報酬と給与が明確に分かれていて、他の労働者と同様に雇用契約やタイムカードなどで管理されている必要があるという役所もあります。
そもそも役員報酬が出ている時点で対象外というところもあるようです。
税務上のことは税理士さんとご相談していただく必要がありますが、通常、役員報酬は毎月一定ですので、途中から増額したり一時金を支給したり出来ないものと思います。
また、社労士の立場としては、代表取締役というのは労働者という立場にはなり得ない(雇用保険にも加入できない)ので、他の役員とは違い、代表者は処遇改善加算の対象になり得ないと思うのですが、役所によっては代表者も処遇改善加算の対象にしてもよいとなっています。
返戻や指定取り消しのリスクを0にするなら
結論:役員は処遇改善の対象にしないのが一番無難
しかし、役員にも支給するとした場合に考えられる対策としては
1.役員報酬と給与をわける
2.給与部分は雇用契約書、タイムカードにより管理する
3.役員も雇用保険に加入しておく(ただし、代表者は加入不可です)
4.役員報酬の支払い方について、税理士や税務所で確認しておく
5.役員であっても給与部分は労働保険料を支払っておく
このようなことが考えられます。
そもそも役員報酬が支払われる時点で対象外とする役所もあるようですので、事前に確認が必要です。
当事務所では、例え顧問先であっても、処遇改善加算の対象としても良いか否かの回答はしておらず、必ず事業所から役所への確認をお願いしています。
賃金改善以外への使途
処遇改善加算は、賃金として支給したものに限ります。研修費などへの充当はできません。
また、研修費用を給与として支給したとしても、それは労働の対価ではなく実費の支弁にあたるため対象外です。
賃金改善にあたらないもの
退職金、福利厚生費、健康診断費用、予防接種費用、介護機器の購入費、資格取得費、研修費用など
給与であっても対象にならない手当
法律上、当然に支払うべき残業代や休日出勤などの割増賃金は処遇改善の対象とはなりません。
移動手当、待機手当、会議手当、住宅手当など、労働の対価にあたらない手当も対象外になる可能性があるため、事前に役所で確認が必要です。
元の賃金を下げている
元の賃金を引き下げて、実績報告の際に多く計上している事例があります。
これも不適切として返戻や加算取消、悪質な場合は指定取り消しの対象となります。
例1)
基本給 200,000円
↓
基本給 190,000円 処遇改善手当 20,000円
※基本給を引き下げているため、1万円は対象外です。
例2)
基本給 200,000円 役職手当 20,000円
↓
基本給 200,000円 処遇改善手当 20,000円
※役職を退いていないのに役職手当を処遇改善手当に変えて実績報告に計上するのは不適切です。
処遇改善加算の注意点など
処遇改善加算の違反等は全額が返戻対象になる
処遇改善加算は、要件を満たしてはじめて受給できるものです。
もし、要件を満たさない場合(対象外の者に支給していたなど)は、加算要件を満たさないということになるため、加算としてもらった給付費はすべて返戻しなければなりません。
受給した金額が大きい場合や、意図的に不正を行ったような悪質な場合は指定取消処分になります。
実際に返戻が生じた事業所や、役員に支給していたとして指定を取り消された事業所もあるようですので、適正な運用を心がけましょう。
最低賃金との関係
最低賃金に満たない基本給に、処遇改善加算を充てることで最低賃金を満たすことは問題ないのかという疑問が生じます。
例えば、最低賃金が950円から1,000円に引きあがったとします。
元の最低賃金950円に50円の処遇改善手当を支給し、この50円を実績報告に計上しても問題ないか?
厚生労働省に下記のとおり回答があります。
結論は、最低賃金を処遇改善加算で満たすことは可能ではありますが、趣旨からすると望ましくないとなっています。
賃金改善という趣旨に合わないように思えますが厚労省の見解です。
平成30年8月6日の介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)に回答があります。
Q.最低賃金を満たしているのかを計算するにあたっては、介護職員処遇改善加算によ
り得た加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるのか。
A.介護職員処遇改善加算により得た加算額を、最低賃金額と比較する賃金に含むか否かについては、
当該加算額が、臨時に支払われる賃金や賞与等として支払われておらず、予定し得る通常の賃金として、
毎月労働者に支払われているような場合には、最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるが、
当該加算の目的等を踏まえ、最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい。
このような声をききます
当事務所では、よく下記のようにお聞きすることがあります。
・他の事業所もやっている。
・他の事業所もこの方法で申請を通っている。
・これまで指摘を受けたことがない。
・知り合いが出来ると言っていた。
役所によって見解が異なっていますので、このような声はあるものと思います。
しかし、実地調査等で指摘を受けた際の言い訳にはなりませんので、正確な情報を管轄の役所で確認するようにしましょう。
本ページ作成後に、厚生労働省より新たな基準や指針が出ている可能性がございますので、必ず最新の情報を確認していただきますようお願いいたします。
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